池坊専応

  • 二十八世
  • 大永(1521~28)から天文期(1532~55)に活躍
  • 天文12年(1543)没 享年62歳

池坊の華道理念を確立した人物です。池坊いけばなの考え方を、一般に『池坊専応口伝』の名で知られる形でまとめました。特にその序文は有名で、従来のただ綺麗な花を飾るだけのものとは異なり、植物の命を見つめ、そこに人の心を加えて一つの世界を作るという、いけばなの根本的な考え方を提示しました。

池坊専応関連年表

天文11年(1542)専応、圓林坊賢盛に自筆の口伝を相伝
天文12年(1543)専応没

池坊専応口伝

専応が弟子にその教えを伝えたものです。一般には口伝とはその名の通り口頭で伝えられるものですが、場合によってはその内容が書き著されることもありました。そのような口伝の写本がいくつか残っています。

類本がいつくかありますが、『続群書類従』に収録されている天文11年(1542)のものが有名です。江戸時代の塙保己一という学者が編纂した、日本の古書をありったけ集めた『群書類従』とその続編『続群書類従』という書物があります(正編667冊、続編1185冊もあるそうです)。この『続群書類従』に専応の口伝が掲載されているのです。口伝を記したものなので、現在の出版物のように題名があるわけではないのですが、奥書にある「自筆書注則令口伝申候」という字句から一般に『池坊専応口伝』と呼ばれています。

川端康成さんがノーベル文学賞を受賞した際の記念講演『美しい日本の私―その序説』の中でもこの専応口伝からの引用があり、日本文化の特徴の一面を端的に表していると言えるでしょう。