桃の節句

生花正風体 桃
生花正風体

上巳の節句は少し過ぎましたが、桃の花を生けてもらいました。上巳の節句というとちょっと馴染みがないかもしれませんが、「雛祭り」や「桃の節句」というとピンとくるのではないでしょうか。古くからこの日は桃の花が飾られて来ました。桃は中国では邪気を払うものとして考えられ、それが日本にも伝わったようです。ちょうど季節の花であったこともこの日に桃が飾られる要因でしょう。

もっとも、この時期に桃の花が咲くというのは旧暦の時の話で、今では3月3日はまだ桃の花が咲くには早すぎます(今年は4月18日が旧暦で表現すると3月3日になります)。今3月に花屋でよく見かける品種は「矢口」といい、蕾の固いうちに枝を切り取り温室で育てるそうです。昔は桃の咲き乱れる季節に雛祭をやったものが、その印象だけは受け継がれ、今では人工的に早く咲かせた桃の花を飾っているというわけです。古くから伝わっている行事はこのように暦がずれている関係で、あれっと思うこともあります。

いけばなでは「桃は桃らしく、梅は梅らしく」とよく言われ、それぞれのらしさをよく捉えて生けると良いとされています。梅が厳しく力強い雰囲気なのに対して、桃は優しい可愛らしい雰囲気です。具体的には枝の分かれ目のところが丸みを帯びています。花のつき具合や木肌も梅に比べて柔らかい印象を与える要素です。そういった桃の特徴をうまくいかすのがコツです。

桃は古くから日本各地で栽培され、親しまれています。万葉集にも桃を詠んだ歌があり、当時から馴染みの深い花だったことが伺えます。ひとつ紹介しましょう。

春の苑紅にほふ桃の花下照る道に出で立つをとめ

大伴家持『万葉集』

美しい歌ですね。情景を思い浮かべるとはっとします。

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カテゴリー: お弟子さんがお稽古でいけた花

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