立花(りっか)は基本的には多くの種類の植物を取り合わせて、それぞれが譲り合いながら調和して一つの世界を作り上げます。 その中で例外として一色物(いっしきもの)と呼ばれる立て方があります。ある特定の植物に焦点を当て、その植物を主にして立てる花です。
現在伝わっているのは松、蓮、桜、燕子花、菊、紅葉、水仙の七種類です。 ただし、一色と言っても、その植物だけしか使わない訳ではありません。例えば水仙一色だと足元に金盞花を使ったり、紅葉一色には白玉椿を使うことがあります。それぞれに伝があり、心得や技法が伝わっています。
慶長11年(1606)の『座敷之飾花の子細家之極義秘本大巻上』には一瓶一色之事として蓮花、杜若(かきつばた)、水仙、菊、松が挙げてあります。 つまり当初は5つの一色物がありました。これは初代専好宗匠の時代です。
次の二代専好宗匠の作品を写した絵図には桜の一色と紅葉の一色もあり、この時代に現代まで伝わる七一色が成立したとされています。
参考までに、桜一色は『立花之次第九拾三瓶有』に収録されており、寛永6年閏2月21日(1629年4月14日) 紫宸殿(ししんでん)にて立調とあり、紅葉一色は『立花砂物図』に収録されており、寛永12年10月7日(1635年11月16日)月次会にて立調とあります。
後の時代に書かれた『塊記』の享保13年2月4日(1728年3月14日)の条には、紫宸殿で行われた立花会で立てた桜一色の立花に言及し、 「専光ガ桜ノ一色ト云事ハ此時ヨリシテ始リケル」と記載されています。