稽古始めの品

生花正風体
葉蘭

明治時代に書かれた生花正風体の教科書にこうあります。

葉蘭は稽古始の品にしてこれに依り研究を怠らざれば能く花の形を会得するなり

『華かがみ 生花栞の巻』

昔から初歩の生花の稽古には葉蘭を用いるのが良いとされてきたのです。比較的どの季節でも手に入りやすいこと、葉の裏表と左右がはっきりしており生花の陰陽を学ぶのに適していることがその理由です。

昨今ではいけばなに使える葉蘭が手に入りづらくなってきました。しかし、僕の所では初めて生花を勉強する方にはまず葉蘭から始めてもらいます。今の時代に合わせる事も大切です。それと同時に、せっかく伝統文化を学んでいるのですから昔ながらのやり方もできる範囲で取り入れたいと思っているのです。

この方は生花は2回目です。葉の選び方が適切できりりとした花になりましたね。

生花正風体
葉蘭

こちらはもう少し稽古が進んだ方がいけた葉蘭です。葉を11枚使っています。先ほど引用した教科書にこのようなことも書いてあります。

葉蘭は十五枚を以て極数を定め置く其上を生ることを禁ず依て此の教へ図には九枚迄を見はし置く余は熟達の上生る事よし

『華かがみ 生花栞の巻』

葉蘭は15枚までいけますが、枚数が多いと難しいものです。こちらの方ははじめて11枚に挑戦されました。うまくまとまっていますね。

葉蘭は初歩の方に最適な花材であり、また稽古が進んだ方が基礎を確認するのにも適しているのです。ときどきは戻りたい花材です。