秋の七草の一つでもあり、大和撫子という言葉にもなっているように、日本人にはとても馴染みのある花ですね。もっとも、現在花屋さんで我々が見かけるのは園芸品種が多く、「大和撫子」の言葉から連想されるような可憐な趣はありません。園芸品種の撫子のことを指して「ダイアンサス」と呼ぶこともあります。大和撫子の別名を持つのは日本に自生している河原撫子です。
本来は夏から秋にかけての花ですが、園芸種は様々な品種があり、ほぼ年中手に入ります。また、安価で水持ちもいいことからいけばなでも重宝されます。いけばなでは可愛らしい花だけでなく、葉が重要です。なるべく葉がシャキッとして美しいものを選びたいものです。
同じナデシコ科ナデシコ属の花にカーネーションがあります。撫子に比べると花がずいぶん大きくて豪華ですが、よく見ると茎や葉の部分はとても似ていますよね。仲間なのも納得です。
撫子は古くは「常夏(とこなつ)」という異名を持っていました。これは花期が夏から秋まで及ぶことによるそうです。『源氏物語』の巻名の一つにもなっており、当時から日本人に愛されてきた花であることがわかります。